色白で綺麗な娘お馬は、髪が少し赤く人目についたといわれている。鋳掛屋の長女で武家奉公に出たあと、五台山(高知市)のふもとの親元に帰った。
母親の手伝いで、洗濯物を届けに寺に出入りしていたお馬は、そこで竹林寺(五台山)の僧・純信と人目を忍ぶ仲になった。お馬17歳、純信37歳であった。やがて純信の想いは、人目を忍んで「かんざし」を買うほどになったのだが、色恋はかくしきれぬもの、たちまち世間に知れわたって「不倫の破戒僧」として謹慎の身となり、お馬は寺への出入りを禁止された。“お馬恋し”と思い悩んだ純信はついに意を決して、安政2年(1855)5月19日の夜、ひそかに寺を抜け出し、楠目村の安右衛門という者を道案内人に稚児姿に扮装させたお馬を連れて駆落ちをしてしまった。
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